診療内容
心療内科・精神科で取り扱う病気は個別性が高いため、同じ病名であっても一概にはまとめきれないことも多く、人によって症状や適した治療はさまざまです。実際には、困りごとの内容に加え、これまでの経緯や取り巻く環境などをじっくり聞かせていただきながら、人となりを深く理解し、それぞれに見合った治療を組み合わせて行います。
うつ病
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うつ病は日本人の約15人にひとりが経験するとされており、年齢や職業に関係なく誰もがかかる可能性のある病気です。脳のはたらきにトラブルが生じることで、こころやからだにさまざまな症状を引き起こします。上記の症状以外にも、将来に希望を持てない・そわそわして落ち着かない・なんとなくだるくて疲れやすい・よくないことをぐるぐる考え続けてしまう・そのために寝付きが悪く、朝早く目が覚めてしまう——などが挙げられます。深刻になると、消えていなくなってしまいたいと思うほど落ち込んでしまうこともあります。
こうしたうつ状態を引き起こす病気はうつ病だけではなく、他の病気で起こることもあります。適切な治療のためには適切な診断が重要となるため、一度で見立てを決め付けずに、経過に応じて見直しを行います。
治療法
まずは十分に休養をとり、こころとからだのエネルギーを貯める期間を設けます。自分自身にとってくつろげることや楽しめることがあるならば、疲れない範囲で生活に取り入れても構いません。
それと同時に、脳のはたらきを整えるための薬を用います。当院では安易に薬に頼りすぎないように心がけていますが、薬が有効と判断できるときには、適切な範囲で使用することを提案します。薬の効果が現れるまでに数週間がかかることも多いため、焦らずじっくり静養しましょう。
少し余裕が出てきたら、ゆううつな気分に影響しているストレスや問題点のことを整理して、どのように工夫して解決していくとよいかを話し合います。当院ではそのような話し合いを通じ、具体的な解決案の計画、実践、見直しを繰り返しながら回復を図っていきます。
パニック症
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パニック症は、強い不安感と同時にいくつものからだの症状が激しく起こる「パニック発作」を繰り返す病気です。発作の際には動悸、息苦しさ(過呼吸)、発汗、めまいなどが同時に現れて数分以内にピークに達し、コントロールできず死ぬかもしれないと思うほど強烈ですが、その後数分〜数十分程度で自然に治まります。からだの病気ではないため、検査をしても異常はみられません。
こうしたことを一度経験すると、また同じようなことが起きるのではないかと怖くなって、安心して行ける場所が少なくなり、生活の幅が限定されてきてしまいます。
日本人の100人に1〜3人程度がかかるとされており、まれな病気ではありません。
治療法
不安と関連した脳内の神経系の機能異常が原因とされており、そのはたらきを整える薬が有効です。その上で当院では、ご自身が不安や恐怖感との向き合い方を知り、生活の範囲を少しずつ取り戻していくことを目指します。
強迫症
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強迫症は、ある「不快な考え」にとらわれて、その不安を振り払うための行為を繰り返さずにはいられないために、生活に支障が及ぶ病気です。典型的には、汚れがひどく気になって色々な物に触れられず、何度も手洗いを繰り返すことに時間を奪われたり、「鍵がきちんと閉まっていないのでは」「車で誰かをはねてしまったのでは」といった考えが頭から離れず、何度も確認に戻るために目的地にたどり着けなくなったりします。こうした考えや行動が現実的ではなく行き過ぎであるということは自分でもわかっているのですが、どうしても気になってしまいやめることができません。単なるきれい好きやこだわりの強い人とは異なり、それらをやめられないことに苦痛を感じているのが特徴です。
治療法
やはり脳のはたらきを整える薬と共に、症状の仕組みを理解し、不安や恐怖感との向き合い方を身につけることが重要です。こだわりを全てなくすことはなかなか難しいですが、生活に支障のない程度にまで苦痛を和らげられるように、一緒に話し合っていきます。
社交不安症
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人前に出たり、よく知らない人と接したりする場面ではだれでも緊張するものですが、そうした緊張や不安の程度が極端に強く、必要なことであっても避けてしまうために社会生活に困難が生じている場合には、社交不安症の可能性があります。
社交不安症では、相手からどう見られているかが気になるあまり、相手と目を合わせないようにしたり、紅潮や汗を悟られないように顔を隠したりします。ひどくなると学校や会社にも行けなくなり、受験、就職や結婚といった大切な人生の選択にも影響が及んでしまいます。
治療法
極度の不安を薬で抑えつつ、不安や緊張が生じるメカニズムを知り、それらとどのように付き合っていくかを話し合います。恐怖や不安を感じる場面を極端に避けている場合には、前向きな人生を取り戻すためにも、どうしたらその場に留まれるようになるかを一緒に考えていきます。
過敏性腸症候群
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胃腸の病気があるわけではないのにも関わらず、お腹の痛みや下痢または便秘を繰り返す病気です。ストレスや緊張、不安などが関わっているとされていますが、自分自身ではそのことにうまく気付けていないこともあります。トイレのない場所には行けなくなってしまうなど、生活に支障が及びます。
治療法
症状に合わせて、ときには便秘や下痢を抑える薬を利用しながらも、ストレスへの対処の仕方について話し合います。どのような対処法が向いているかは人によってさまざまなので、自分に合った方法を選べるようにお手伝いします。